内田良子さんトークイベント「こどもが一歩を踏み出すとき」開催報告

9月28日(日)13:30〜15:30、NPO法人「知のアトリエ」では、心理カウンセラーの内田良子さんをお迎えし、トークイベント「こどもが一歩を踏み出すとき:不登校は“異常”ではなく、子どものサイン」を開催しました。会場には保護者や教育関係者などおよそ25名が集まり、子どもたちの不登校や登校しぶりをテーマに、学びと気づきの時間を共有しました。

目次

講演の概要

講師の内田良子さんは、半世紀にわたり子どもや保護者の相談に寄り添ってきた心理カウンセラー。不登校やひきこもりに関する世間の「異常」「親の責任」といった誤解を解きほぐしながら、子どもの心に寄り添う大切さを次のように語りました。

  • 不登校は病気や異常ではなく、子どもからのサイン
  • 「親のせい」でも「子どもの弱さ」でもない
  • 安全に休める場所、安心できる居場所が次の一歩を支える
  • ゲームや昼夜逆転も自己調整の一部であることが多い
  • 「早く学校に戻そう」と急かすことで傷を深める危険がある

内田さんは、実際の相談事例を交えながら「子どもは休むことで心を回復させ、やがて自分の力で必ず立ち直る」と繰り返し強調しました。芸術活動や趣味に没頭する時間は「生きる力を取り戻す大切なプロセス」であり、大人はそれを遮らず支えることが大切だと語りました。

加えて、現在の不登校対策が「早期復学」に偏重していることに警鐘を鳴らしました。子ども自身の回復プロセスを待たずに学校へ戻すよう促す政策や支援は、むしろ傷を深め長期化させる危険性があると指摘し、社会全体が子どもの歩みを尊重する姿勢へ転換する必要性を強調しています。  


質疑応答と参加者の声

質疑応答では、保護者から率直な悩みや不安が次々と投げかけられました。

  • 「学校に行けない我が子を見て焦ってしまうが、休むことを認める勇気を持ちたい」
  • 「ゲームばかりの生活に不安を感じていたが、回復のプロセスと知って安心した」
  • 「同じ悩みを抱える親が多いことに気づき、心が軽くなった」

こうした声に対して内田さんは、
「親が不安でいると、その気持ちは子どもに伝わってしまいます。『あなたは大丈夫』という安心感を示すことが何よりの支援です」
「学校に戻ることだけを目標にせず、家庭の中で安心して過ごせる時間を積み重ねましょう」
と具体的にアドバイスしました。

また「保護者自身も安心できる居場所を持つことが大切」「同じ悩みを分かち合う仲間とつながることが、親にとっての回復にもなる」と、保護者支援の必要性についても触れました。講演後には参加者同士が自然に言葉を交わし、互いの経験を分かち合う姿が見られました。


旧・那須高原海城学園関係者より

イベントの最後には、知のアトリエの茂木理事が挨拶を行いました。那須高原海城学園の理念や歴史に触れながら、教育者としての思いを込めて次のように語っています。
「子どもたちは大人が思う以上に強く、自分のペースで歩んでいく力を持っています。大切なのは、私たち大人がその歩みを信じ、見守ることです。今日ここで語られた言葉が、皆さんの支えになれば幸いです」
その言葉に、多くの参加者が深くうなずき、会場は温かな雰囲気に包まれました。


まとめ

今回のイベントは、不登校を「問題」ではなく「子どものサイン」として受け止める視点を広げる貴重な機会となりました。内田さんの半世紀に及ぶ経験から示された回復のプロセスを整理すると、次のようにまとめられます。

  1. 子どもはまず、安心して休める場所を必要としている。
  2. 回復期には、芸術や趣味、創造的活動に没頭する姿が見られる。それを妨げず支えることで成長へつながる。
  3. 親は「心配や不安」を「信頼や安心」に変え、自らの軸を持つことが大切。
  4. 安心と信頼の中で休養を得た子どもは、自ら社会に向かう一歩を踏み出す。
  5. 学校に通わない時期があっても、十分に回復した子どもは必要に応じて学びに戻り、進路を選び取っていく。
  6. その一歩の前段階として、家族以外の人との交流や居場所が必要。保護者自身の居場所づくりも同じく重要である。

「知のアトリエ」では、今後も地域に根ざした学びと交流の場を開催していきます。子どもが一歩を踏み出すその瞬間を信じ、大人もまた一緒に歩んでいけるよう、活動を続けてまいります。


📌 主催:特定非営利活動法人 知のアトリエ
📍 会場:旧那須高原海城学園(栃木県那須町)
👉 詳細は 知のアトリエ公式サイト をご覧ください

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次